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「…単刀直入になるんだけどさ。なんで、雫さんのこと嫌いなの？」
「…。僕の名前って何？」
「え…？名前？詩、だよね」
「あの人から僕の名前、気いたことある？」
「……ない」
そう。
名前決めたのもお父さん。
名前呼ぶのもお父さん。
母さんから、「詩」なんて一度も聞いたことがないんだ。
その上、僕のお世話とかも全部ほったらかして仕事ばっか。
佐竹さんはどうして好きになったんだろうね
「そっかぁ。そういう事かぁ」
「…母さんのこと、好きなの？」
「そうだね」
「へぇ〜」
即答するくらいに好きなんだ…。
多分、気合わないよ。僕ら。
それでいいじゃん
「仕事熱心で周りをよく見ていて優しい。それにね、デスクには家族写真があって、小さい詩くんもいたよ」
「…！？ど、ゆこと？」
「同僚さんが言うには、仕事復帰してから子供の相手の仕方が分からないって」
「へぇ〜？だから、なんですか」
「結婚する前、付き合う前から旦那さんの言うこと聞かず、残業ばっかりしていたみたい。それが、周りからの期待やプレッシャーで仕事をせざるを得なかったんだって」
期待、プレッシャー
仕事を残業してまでしないといけなかった。
何か、追い詰められてた…？
「仲良くしろとは言わないよ。詩くんからしたら、だから？みたいなのはあるのも分かるから」
「…」
「？詩くん…！」
「なぁんだよ。早く言えよ」
「え！？ごめんね！大丈夫？」
優しい言葉、暖かい空間。
知られざる真実。
あーあ。
泣いたのなんて、お父さんが亡くなった日以来だよ…。
「僕の名前、呼んでよ…」
「…詩くん」
僕の求めてるものって一体なんなんだろうか。
「…僕は、きっと、何かが欲しかったんだ…」
でもそれは、何？
何が欲しい…？
あぁ、きっと…
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