短編集【d】【npl】 (ページ11)

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出席番号/syp ページ11

入学式の日。

高校は少し遠くの所へ志望した為、知り合いなんか居らへんかった。

見知らぬ人々、見知らぬ校舎ということもあり、柄にもなく緊張していた。

教師から手渡されたプリントの通り、出席番号順の席に座ると、目の前の席は女だった。

｢初めまして！私、Aっていうんだ！君のことはなんて呼んだらいい？｣

屈託のない笑顔で言われ、緊張がほぐれたのを覚えている。

｢…へー！じゃあショッピって呼ぶね！よろしく！｣

席が前後ということもあり、俺達はよく話すようになった。
…というよりも、Aが俺によく振り返って話しかけてきたから、それに応えていたと言った方が正しいか。
そのせいでAは先生にいつも怒られていたが、懲りずに毎回の如く俺に話しかけてきた。

｢ねー、ショッピは部活何にするの？私はね、美術部に入るよ！｣

｢ふーん…絵とかかけるん？｣

｢な、馬鹿にしないでよ！｣

そのまま黒板に背を向けて俺のノートの端に落書きをするA。

確かに下手ではなかった。
が、数週間後、すぐに退部したと聞いた。
美術部は企画ばっかりで好きな絵が書けない！と嘆いていて、自由やなあ、なんてぼんやりと思った。

｢ショッピショッピ！テスト期間って部活休みだよね？一緒に勉強しない？｣

｢ええよ。どこでやる？｣

｢んー、図書館だと黙ってないとだし…あ、あそこのフードコート行こうよ！｣

｢あそこは学校近いからテスト期間混むと思うで。フードコートならこっち行こうや｣

｢おっけー！｣

テスト勉強なんて名ばかりで、軽食をつまみながらずっと話していた。
先生の悪口大会や、同級生の恋愛事情…

後から思えばつまらない話ばかりだが、この時間は輝かしいものだった。