短編集【d】【npl】 (ページ14)

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Aがうちに遊びに来るなんて気合を入れるに決まっている。

掃除もキッチリしたし、可愛い食器も洗っておいた。

早々と淹れたせいで冷めてしまったミルクティをひとりで飲みながら待っていれば、Aが惣菜を持ってうちに来た。

｢お待たせー！｣

｢よお来たな、入って入って！｣

だべり、ゲームをし、また俺はふざけたりして、2人で笑いあった。

おやつとして買っておいたジェリービーンズを見ると、この味が好きと言っていた色だけなくなっていて、少し笑ってしまった。

余ってしまった色を見て、少しの引っ掛かりが胸に湧いた。

もし、君を楽しませれなくなったら、俺は
ガスの抜けた古いコーラみたいな存在になってしまうのだろうか。

もう電車の時間か…

あまり引き止めて終電ギリギリになってまうのはAに悪い。

適度な時間に声をかけ、2人で家を出た。

俺は自転車を引きながら、Aを駅まで送る。

別れの寂しさからか、ハニーパイみたいな甘い痛みが、胸に広がる。

さよならをするのが名残惜しくて、

寄りかかっていた自転車からふざけたように降りる。

そんな様子を見てAはまた、笑う。

ピエロみたいにおどけてしか、君を楽しませれない

こんな、世界でいちばんみじめな男に、

キスしてほしい

なんて、贅沢かもしれない

世界で1番みじめな男

｢A！バイバイのちゅー！｣
｢もう、こんな外でしないよ｣
｢そっかあ、残念やなあ…気をつけて帰りや｣
｢すぎるくんも気を付けてね！またね｣
｢…っ…うん！またな！｣