この涙の意味が/ht※ ページ42
俺には恋人がいる。
Aって名前の、可愛い可愛い恋人。
俺の、A。
ある日の休日。
マンちゃんと出かけていた途中、買い物中のAと出会った。
買い物袋を見ると、食材が入っている。
普段着だし、スーパーの帰りか…。
｢あ、らんちゃんにオスマンさん、こんにちは｣
｢A｣
｢こんにちは、Aちゃん｣
挨拶をして、二人が話し出す。
あー、何か、近くない？
なんでそんなに近寄ってんだよ。
マンちゃんにも、Aにも…どっちにもいらいらする。
…俺の、A、なんだよな？
二人ともニコニコニコニコしちゃってさ、
あーワケ分かんねえ。
笑顔の二人を見ると、妙にムカついてきて、マンちゃんへ適当に言い訳をしてAの腕を引っ張り家に向かう。
｢らん、ちゃん…何、どうしたの…？｣
｢別に、家行くだけだし｣
家に着き、部屋に入るや否やAを突き飛ばす。
｢いっ！｣
｢ねえ、Aは俺の彼女なんだよね？｣
｢え？いきなり何を…｣
｢いいから答えろよ｣
｢っ、う、うん…そうだよ…｣
｢じゃあ何でマンちゃんとあんな仲良く話してんだよ！｣
俺がそう言えばAはびくりと体を震わせる。
何で怖がってんだよ。俺がただ聞いてるだけじゃん。
ゆっくりと後ずさる意味は何？
｢何でって…らんちゃんの友達だし…｣
｢俺の友達だからって仲良くしなきゃいけないわけ？｣
｢…え？｣
心底分からないという顔をするA。
こっちの方が分かんねぇし。
俺の彼女なら俺とだけ話せばいいだろ？
俺にだけ笑ってればいいだろ？
壁際まで追い詰めたAの顔すれすれに壁を殴る。
あー、痛え。
｢…ねえ、Aは俺の、だよね？｣
｢っ…｣
｢なぁ！｣
｢う、ん…｣
｢っはは、だよな｣
何だ、同じ気持ちだったんだ。
じゃあ、もう次は大丈夫だよな。
な、A。
…あれから、何日が経った。
何なんだろうな。
俺はさ、Aが好きだよ。
で、こないだちゃんと言ったよな、俺の彼女だって。
Aも頷いたよな。
なのに何でまた同じことしてんの？
トントンと楽しそうに笑いあってさ。
…俺のこと、どうでもよくなった？
俺の視線に気付いたAは、ハッと笑顔を無くす。
何で？
Aは俺ので、Aの笑顔も俺のなのに、何で俺には笑顔を向けねぇの？
…気付けば、家にいて、
Aが泣いて倒れてて、
俺も涙を流してて、
この涙の意味が
後悔なのかも分からない。
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作者名：ビリヤニ | 作成日時：2024年1月18日 19時
