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その日も自転車を気まぐれに走らせて、身近な未知を探していた。更に知らない道を、と奥へ奥へと進んでいるうち、薄暗い影が落ちてきた。気がつけば大分森に近いところまで来ていたようで、木々が日を遮って、トンネルの中のようにあたりが暗かった。コンクリートの地面もところどころが割れて、走るたびガリガリと嫌な音がした。仕方ないがないから、引き返そうと自転車を反転させ、元来た道を辿り始めた。薄暗い道が暫く続き、いつまで経っても日が差さない。もしや道に迷ったのか、と焦りでハンドルがじっとりと濡れてきた。通ってきた道は一本道なのだから、元来た道を進めばすぐ出られるはずなのに。もしやこのまま帰れないのでは、と一瞬考えた。いや、焦っても良いことはない、まずは落ち着こう、道に迷ったことなど一回や二回ではないだろう。それでもなんとか家に帰りつけているじゃないか。きっともうすぐ明るい道に出るさ、と額の汗を拭って、顔を上げた。
目の前に豪邸があった。西洋風の檻のような門と、少し汚れてはいるが、その汚れすらアンティークのような趣きがある白い塀。そして、レンガ造りの西洋建築。一歩間違えれば朽ち果てかけた遺跡のようにすら思えるはずの、蔦が壁に絡まっている様相すらも、これこそ西洋屋敷の手本なりと言わんばかりの圧があった。
こんなもの、通ってくる時は無かった。やはり、道を間違えたのだ。でも走ってきたのは一本道のはず。一体全体何処で進路を誤ったのか。ぐるぐると思考を巡らせるものの、人より鈍い頭では良い考えは浮かばず。数分考えた末、このお屋敷の人に道を尋ねる事にした。こんな豪邸だから、あわよくば、豪勢なお菓子なんかを手土産に貰えないかと浅ましいことを考えて、檻のような門の前に立った。当然、門はしっかりと閉じられて、体をねじ込む隙間もない。
「すみませえん、誰かいませんかあ」
二,三度呼んでみたが、誰かがやってくる様子はない。声の調子を張り上げて、もう何度か呼んでみたものの、やはり誰もやってくる様子はない。もしかしたら留守なのかもしれない、いや、こんな森の近くの、周りに木々しかない場所にあるのだから、別荘として、長い休暇にだけ使っているのかもしれない。仕方がない、自力でどうにか帰り道を探そうとため息を付いた。
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あいすくりぃむとちょこれぃと(プロフ) - すにすな@さくらぁさん» またまたコメントありがとうです。兄がぽんこつならもちろん弟だってぽんこつです。間に合ったルートは(弟的には)ハピエンです。間に合わなかったルートも(どっちも壊れちゃったから)ハピエンです。 (4月23日 14時) (レス) id: b2ed5b6349 (このIDを非表示/違反報告)
すにすな@さくらぁ(プロフ) - またしてもコメ失礼します🙇♂️弟視点に命が助かりすぎました。まさかの救済ルートか!?と思ったら案の定そんなものはなく…やっぱり可哀想な男はどう足掻いても可哀想な結末しかないんだというのを再認識できてとても良かったです。 (4月23日 7時) (レス) @page25 id: 6eb52e408b (このIDを非表示/違反報告)
あいすくりぃむとちょこれぃと(プロフ) - すにすなさん» コメント感謝です〜こいつは実は弟より全然頭良いです。頭が良いせいで頑張っても無駄と気づいてしまいました。それでも他にやりようはあったのに、『逃げ出す』という一番の悪手を選んでしまうぽんこつです。作者もお気に入りなのでもしかしたら続くかもしれない。 (4月8日 23時) (レス) id: b2ed5b6349 (このIDを非表示/違反報告)
すにすな(プロフ) - お話の世界観や最後の後味の悪さに引き込まれ、一気に読んでしまいました。特に2作目のおにいちゃんのお話が大好きです。一生懸命頑張ったけど報われず、最期の瞬間は惨めであっけない男が好きなので、ゼストおにいちゃん最高でした。密かに更新楽しみにしています。 (4月8日 22時) (レス) @page21 id: b675f659fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あいすくりぃむとちょこれぃと | 作成日時:2024年4月6日 3時